映画「疾風スプリンター」公式サイト » PRODUCTION NOTE

PRODUCTION NOTE

【自転車競技入門】
『疾風スプリンター』の撮影は、種類や競技場所の異なる自転車競技全般にわたっていて、トラックレースからロードレース、あまり知られていないマディソンまでが順番に紹介されている。自転車レースは個人戦のように見えるが、実際にはチーム力が重要で、各チーム内での選手の役割と責任感が勝負の鍵を握っている。

チーム内の役割

1チームは通常6~9人。レースの距離やルールによって異なる。

「エース」
リーダーとも呼ばれる。各チームに数人、各レースシーンに応じて好成績を挙げる可能性が最も高い選手が担う。エースはレース中、チームメイトのサポートを受け、風による影響や体力の消耗、ライバルの妨害から守られる。ゴールの200~300m前から、抜け出して最後のスプリントをかけるためだ。そのため、エースには爆発的なパワーが求められる。

「アシスト」
チームの中で、最も多くの選手がこの役割を担う。主な任務は、エースの前方を走って風よけとなり、ゴールスプリントをかける体力をエースに温存させること。通常かたまって隊列を組み、風の抵抗を抑える。また、ライバルとの駆け引きも行う。突然、加速して逃げを図ると、離されまいとする敵アシストは追撃に出る。こうした駆け引きを通してレース全体のスピードやリズムの維持を図るのだ。うまくすれば、ライバルの体力を早めに消耗させ、失速させることができる。レース中のいかなる事態にも、アシストは経験と連係力で対処する。戦場の狙撃手のように、コース上の一草一木にまで目を配り、風向きや風速を目測で判断しなければならない。そして、エースが事故でリタイヤするなど不測の事態が起きた場合には、エースの代役を務めるなど、エースと同等の実力を持つ選手も含まれ、この様な選手は「セカンド・エース」と呼ばれることもある。

レースの種類

本作ではロードレースの他に、トラックレース、マディソンなどが登場するが、それぞれに特色がある。

「ロードレース」
全世界の選手が所属するチームは主に3つのランクに分類される。3番目のランク(コンチネンタルチーム)には無数の選手が所属し、躍進を狙っている。そこから選ばれた者だけが2番目のランクの(プロフェッショナルコンチネンタル)チームへ加入がかなう。最上位ランクのワールドチームは全世界に二十数チームあり、ロードレース界の注目の中心である。レースはランクによって日程が決められていて、最短で2日間、最長では20日以上に及ぶ。さらに、ワンデーレース、ステージレース、個人タイムトライアル、チームタイムトライアル、個人戦など細かに区分される。
中でも、世界三大ツールと呼ばれるのが、ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャだ。期間の長いステージレースで、全ステージの累計タイムで個人総合優勝とチーム優勝を競う。

「トラックレース」
タイムトライアル(男子1㎞、女子500m)、個人追抜競走、団体追抜競走(男子4㎞、女子3㎞)、チームスプリント、個人スプリントなどがある。香港の自転車女王・李慧詩(サラ・リー)選手は、500mタイムトライアル、個人スプリントの優勝常連。個人スプリントは、陸上競技でいうなら100m競走のようなもので、スピード感があって非常に人気が高い。

「マディソン」
トラックレースの一種。名前はニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンに由来する。1チームは2名1組、約100周で競う。チームメイト2人は随時交代が可能で、1人が下段でレースに参加している間、もう1人は上段で待機し交代後のスプリントに備える。10周ごとにポイント周回があり、周回数と合計ポイント数で順位が決まる。危険度が最も高いレースでもある。交代に備える選手は、すり鉢状になったトラックの最上部に控え、斜度を利用して加速、下段のパートナーを追い上げて“タッグ”で交代を行う。走行していたパートナーと手をつなぎ、押し出される形でパワーを引き継ぐのだ。20人ほどの選手が交錯しながらこれを全速力で行うため、1人がバランスを崩すと重大な事故につながる。このため、ダンテ・ラム監督はこのシーンの撮影中はずっと心配し通しだった。

ダンテ・ラムは香港の著名なアクション映画監督だが、その作品には1つの“特色”がある。俳優やスタッフの現場での負傷のニュースが絶えないことだ。そんなラム監督も、本作のようなスポ根モノで、キャスト&スタッフの負傷者数が80人を超え、自身の歴代記録を破ることになるとは考えていなかった。「そのうち5~6人は骨折などの重傷。こうしたリスクはどんなに安全策を講じても避けられない」。
新記録だが、こうした記録は破られなくてよい。