疾風スプリンター

2017年1月7日(土)より新宿武蔵野館ほか全国公開

このド迫力のスピード感と興奮に、胸の震えが止まらない!

業界初!本格プロ・ロードレース・エンタテイメント

連れていく、限界のその先へ――

監督・脚本:ダンテ・ラム『激戦 ハート・オブ・ファイト』 出演:エディ・ポン『激戦 ハート・オブ・ファイト』、チェ・シウォン『ドラゴン・ブレイド』、ショーン・ドウ『サンザシの樹の下で』、ワン・ルオダン『いつか、また』 2015/香港・中国/北京語、広東語、英語、韓国語/スコープサイズ/カラー/DCP/125分/原題『破風』、英題『TO THE FORE』/字幕翻訳:鈴木真理子/提供:ギャガ、新日本映画社/配給・宣伝:エスパース・サロウ

INTRODUCTION

近年、映画界でも拡がり始めている自転車ブーム。
『パンターニ 海賊と呼ばれたサイクリスト』(14)、『劇場版 弱虫ペダル』(15)、『疑惑のチャンピオン』(15)などのヒットにより、自転車ユーザーはもとより、自転車に乗らない人をも巻き込み、エンターテインメントの分野の一つとしてその地位を確立しつつある。そんななか、その盛り上がりにさらなる拍車をかける真打ち登場ともいうべき、超本格派プロ・ロードレース映画が誕生した――それこそが本作『疾風スプリンター』である。
本作が描くのは、アマチュアや学生を対象としたロードレースではなく、あくまでも自転車を生業とするプロ・ロードレーサーたちの熱き姿だ。プロがゆえの葛藤や苦悩、栄光と挫折を浮き彫りにしたドラマを軸に、次々と繰り出される壮絶かつ圧倒的なレースシーンは手に汗握る臨場感!スタントは使わずに、俳優自らが演じることにこだわったそのリアリティがより興奮と緊迫感を増幅させる。
監督は、『激戦 ハート・オブ・ファイト』(13)で知られ、日本にも多くのファンを持つ香港アクションの申し子ダンテ・ラム。キャストには、エディ・ポン、ショーン・ドウ、チェ・シウォンといった台湾・中国・韓国を代表する人気俳優たちが集結。スタッフとキャストの、妥協なき強いこだわりと信念が作り上げた究極のプロ・ロードレース・エンターテインメント!押し寄せる興奮、湧き上がる感動、そのすべてを全身で体感してほしい1作だ。

STORY

“チーム・レディエント”は、チョン・ジウォン(チェ・シウォン)をエースとする自転車ロードレースチームの強豪だ。そこへ、アシストとして所属することになったチウ・ミン(エディ・ポン)とティエン(ショーン・ドウ)。互いにエースの座を目標に切磋琢磨しながら、アシストとして力を発揮し、同時に友情も深めていった。そして、ジウォン、ミン、ティエンの3人は、レディエントを引っ張る主力選手として力を合わせ、ライバルの“チーム・ファントム”の妨害にひるむことなく、台湾各地で連戦を繰り広げていた。そんななか、“チーム・レディエント”は、資金難で運営が立ち行かなくなる。そのため、ジウォン、ミン、ティエンの3人はそれぞれ別のチームに所属することとなり、エースとして競い合うことになるのだが…。

PRODUCTION NOTE

「エース」 リーダーとも呼ばれる。各チームに数人、各レースシーンに応じて好成績を挙げる可能性が最も高い選手が担う。エースはレース中、チームメイトのサポートを受け、風による影響や体力の消耗、ライバルの妨害から守られる。ゴールの200~300m前から、抜け出して最後のスプリントをかけるためだ。そのため、エースには爆発的なパワーが求められる。
「アシスト」 チームの中で、最も多くの選手がこの役割を担う。主な任務は、エースの前方を走って風よけとなり、ゴールスプリントをかける体力をエースに温存させること。通常かたまって隊列を組み、風の抵抗を抑える。また、ライバルとの駆け引きも行う。突然、加速して逃げを図ると、離されまいとする敵アシストは追撃に出る。こうした駆け引きを通してレース全体のスピードやリズムの維持を図るのだ。うまくすれば、ライバルの体力を早めに消耗させ、失速させることができる。レース中のいかなる事態にも、アシストは経験と連係力で対処する。戦場の狙撃手のように、コース上の一草一木にまで目を配り、風向きや風速を目測で判断しなければならない。そして、エースが事故でリタイヤするなど不測の事態が起きた場合には、エースの代役を務めるなど、エースと同等の実力を持つ選手も含まれ、この様な選手は「セカンド・エース」と呼ばれることもある。
「ロードレース」 全世界の選手が所属するチームは主に3つのランクに分類される。3番目のランク(コンチネンタルチーム)には無数の選手が所属し、躍進を狙っている。そこから選ばれた者だけが2番目のランクの(プロフェッショナルコンチネンタル)チームへ加入がかなう。最上位ランクのワールドチームは全世界に二十数チームあり、ロードレース界の注目の中心である。レースはランクによって日程が決められていて、最短で2日間、最長では20日以上に及ぶ。さらに、ワンデーレース、ステージレース、個人タイムトライアル、チームタイムトライアル、個人戦など細かに区分される。 中でも、世界三大ツールと呼ばれるのが、ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャだ。期間の長いステージレースで、全ステージの累計タイムで個人総合優勝とチーム優勝を競う。
「トラックレース」 タイムトライアル(男子1㎞、女子500m)、個人追抜競走、団体追抜競走(男子4㎞、女子3㎞)、チームスプリント、個人スプリントなどがある。香港の自転車女王・李慧詩(サラ・リー)選手は、500mタイムトライアル、個人スプリントの優勝常連。個人スプリントは、陸上競技でいうなら100m競走のようなもので、スピード感があって非常に人気が高い。
「マディソン」 トラックレースの一種。名前はニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンに由来する。1チームは2名1組、約100周で競う。チームメイト2人は随時交代が可能で、1人が下段でレースに参加している間、もう1人は上段で待機し交代後のスプリントに備える。10周ごとにポイント周回があり、周回数と合計ポイント数で順位が決まる。危険度が最も高いレースでもある。交代に備える選手は、すり鉢状になったトラックの最上部に控え、斜度を利用して加速、下段のパートナーを追い上げて“タッグ”で交代を行う。走行していたパートナーと手をつなぎ、押し出される形でパワーを引き継ぐのだ。20人ほどの選手が交錯しながらこれを全速力で行うため、1人がバランスを崩すと重大な事故につながる。このため、ダンテ・ラム監督はこのシーンの撮影中はずっと心配し通しだった。
ダンテ・ラムは香港の著名なアクション映画監督だが、その作品には1つの“特色”がある。俳優やスタッフの現場での負傷のニュースが絶えないことだ。そんなラム監督も、本作のようなスポ根モノで、キャスト&スタッフの負傷者数が80人を超え、自身の歴代記録を破ることになるとは考えていなかった。「そのうち5~6人は骨折などの重傷。こうしたリスクはどんなに安全策を講じても避けられない」。 新記録だが、こうした記録は破られなくてよい。

CAST&CHARACTER

エディ・ポン(チウ・ミン役)

1982年3月24日、台湾生まれの俳優で歌手。 13歳の時に家族と共にカナダへ移住。カナダのブリティッシュコロンビア大学在学中の2002年に、祖母の葬儀のために戻った台湾でスカウトされ、テレビドラマ「あすなろ白書」に出演、芸能界入りする。 2006年『ウエスト・ゲートNo.6』で映画初主演。2007年『DNAがアイ・ラブ・ユー』で第44回台湾電影金馬奨の最優秀新人賞にノミネートされ、2011年『ジャンプ!アシン』で第48回台湾電影金馬奨 最優秀主演男優賞にノミネートされた。その後も『コールド・ウォー 香港警察 二つの正義』(12)、『最後の晩餐』(13)など多くの話題作に出演。『激戦 ハート・オブ・ファイト』(13)では、第50回台湾電影金馬奨と第33回香港電影金像奨の最優秀助演男優賞にノミネートされた。『黄飛鴻之英雄有夢』(14/未)では、ジェット・リー、チウ・マンチョクに続き、新世代のウォン・フェイホン(黄飛鴻)を演じている。
チウ・ミン スプリンター型の選手で、下りと急カーブが得意。レディエントに加入する前から、実力はトップクラスだったが、より高みを目指すスポーツマンとして、レディエントのアシスト選抜戦に強い関心を持つ。所属する韓国人の“自転車王者”チョン・ジウォンと競ってみたかったからだ。 チウ・ミンのアシストのもと、ジウォンは度々好成績をあげる。だが、表彰台で栄光に包まれるのは、ジウォン1人だけ。勝敗への執着が、知らず知らずのうちに、ロードレースに対する当初の志を蝕んでいく。勝利のため、チームメイトや友人を犠牲にし、さらには愛情までも…

ショーン・ドウ
(チウ・ティエン役)

1988年12月15日、中国西安生まれ。北京電影学院卒。 2010年、チャン・イーモウ監督の『サンザシの樹の下で』に主演し、注目される。『秋之白華』(11/未)、『危険な関係』(12)、『傾城之涙』(12/未)、2015年公開のジャン=ジャック・アノー監督『神なるオオカミ』に出演。同年、『新歩歩驚心』『終極勝利』『六人晩餐』の撮影にも参加している。
チウ・ティエン レディエントのアシスト選手。目立つタイプではないが、率直な性格で仲間に愛されている。最も得意とするのは、エースの風よけとなり、有利な位置取りをすること。心臓に先天的な弱点があるため、スプリント力に限界があり、エースを務めたことはなかった。チウ・ミンとは最高のコンビだが、共にシーヤオ(ワン・ルオダン)を好きになってしまい、一転して2人は恋敵になる。 レディエントの解散後、ティエンはツイスターに加入するが、心臓の問題が大きな障害となり伸び悩む。実力を発揮して、ジウォンとチウ・ミンの成績を超えようと、心臓機能の強化にあらゆる手を尽くすが、その勝利への焦りが、徐々に自身にとって最大の敵となっていく。

チェ・シウォン
(チョン・ジウォン役)

1986年4月7日、韓国ソウル生まれの歌手で俳優、モデルでもある。アイドルグループ SUPER JUNIOR、サブユニットSUPER JUNIOR-Mのメンバー。2002年にスカウトされ、SMエンターテインメントの研修生となる。2004年には中国の北京へ留学し、中国語を学んだ。2005年、SUPER JUNIORとして正式デビュー。2006年の日中韓合作映画『墨攻』で映画初出演。2008年、SUPER JUNIORのサブユニットSUPER JUNIOR-Mに参加し、中国でもデビューした。2010年、韓国ドラマ「オー!マイレディ」「アテナ 戦争の女神」。2011年、台湾ドラマ「スキップ・ビート! ~華麗なる挑戦~」、韓国ドラマ「ポセイドン」、2012年、韓国ドラマ「ドラマの帝王」、2015年、中国ドラマ「転身説愛你」、映画『ヘリオス 赤い諜報戦』など数々のドラマ、映画にて活躍中。
チョン・ジウォン 韓国人で、冷静なオールラウンダー型の選手。寡黙で冷たそうに見えるが、実は義理人情に厚い。自分の才能を見出し育ててくれた監督(アンドリュー・リン)が、資金を集めてレディエントを結成すると、上のランクのチームからの誘いを蹴って、ためらうことなく戻ってきた。レディエント加入後、自分と同様に負けん気が強いチウ・ミンに出会う。1年間、チウ・ミンは彼にとって最も頼りになるアシストで、2人は友でありライバルである関係を築く。チウ・ミンの実力が自分に迫ってくるのを見ながら、いずれはレースで優劣をつけることになると予期している。

ワン・ルオダン
(ホアン・シーヤオ役)

1984年1月30日、中国赤峰市生まれの女優。北京電影学院卒業。2004年にTVドラマ「蝶ファンタジー」でデビュー。2007年に主演を務めたTVドラマ「闘争」で一躍人気を得る。2013年には『検索』(12/未)で第29回中国映画金鶏賞最優秀助演女優賞を受賞。そのほか、『后会无期』(14/未)、『宅女侦探桂香』(15/未)など数々の作品に出演している。
ホアン・シーヤオ 中国出身の自転車競技(トラックレース)選手。台湾のコーチに認められ、アマチュアチームのヴァルゴに加入する。半年を越える努力の末、有望新人と注目されるが、肺塞栓症を発症。治療を重ねても根治にはいたらず、走りにも影響が出るため、ずっとレースに復帰できずにいた。 そうした中、チウ・ミンとティエンに出会い、想いを寄せられる。失意のどん底のなか、2人からの相次ぐサポートを受けて苦難を乗り越え、再び競技の場に立つことに。両者どちらに対しても恩を感じているが、最も愛しているのは、一貫してそのうちの1人だけである。

INTERVIEW

Q、この映画の物語を簡単に教えてください。 チェ・シウォンが演じたのは、チームの王様(キング)“エース”と呼ばれる一番の選手だ。エディ・ポンとショーン・ドウは彼のアシスト役だが、二人ともいつかは自分がエースになりたいと願っている。もちろん1つのチームに、キングは1人だけだけれど、ロードレース界の誰かの目に留まればと。 物語の中盤、二人はそれぞれにその願いをかなえる。つまり、目に留めてくれた人がいて、エースに抜擢される。そして、同じチームで目標に突き進んでいた3人が、互いに競い合うことになるんだ。
Q、ロードレースにおける、それぞれの役割とその戦術を映像化する際にこだわった点は? どうやって集団から飛び出すか。どうやって集団の中で有利なポジションを取るか。今回の作品では、そういうものを一貫してドキュメンタリー的に表現した。見てもらうと分かるが、どの選手の位置取りも戦略に基づいている。チームメイトをどう配置するか。ライバルチームで最強のアシストはどこにいるのか。相手をマークする選手も必要だ。ライバルのエースが誰なのかを見極めて…、アシストは全員でエースを守っているから、それをどう分散させるか。どのタイミングでアタックすれば、ライバルを消耗させ人数を削れるか、集団をバラけさせることができるか。そういう戦略がたくさんある。 もちろん最も見応えがあるのは一騎打ち。最強のエース2人の競り合いだ。でも勝負をかける前に、大勢のアシストが自分たちのエースをいかにして最善のコース、最高のポジションに導いたか、そこにこそ一番の面白みがある。アシストたちはエースというキングを守っている。1人のために、ほかの全員が尽くしていると言える。
Q、高雄での撮影秘話などありますか? 1つのシーンのために大胆な要望を出した。どこかの都市の主要道路で、一定の距離を封鎖して撮影をしたいと。結果、高雄市の13㎞の主要道路を見つけ出した。1回の撮影のために13㎞を封鎖したんだ。もちろん上から下まで万全の準備をした。上はヘリコプター、地上は10台のカメラを全面的に配置。このシーンの手配だけで、数ヶ月の時間がかかった。
Q、砂漠でも撮影を行っていますね。いかがでしたか? 自転車競技で、選手たちの不屈の精神を観客に伝えるには、砂漠に行くのがいいだろうと考えた。僕はこれまで砂漠で撮影した経験はなかった。実際に行ってみたら、そう簡単ではなかった。事前に送られてきたロケハン映像は美しくて、青い空に金色の砂だった。ところが撮影スケジュールが大幅に遅れたせいで、行った頃には季候が変わっていた。砂漠があんなに寒いとは! しかし、幸い、運がいいというのか・・・俳優たちはある意味とてもクレイジーで、僕のバカなアイディアに付き合いたいと思ってくれた。潜水服を買って、丈をカットして、アンダーウェアとして着用してもらったり。ともかく、あらゆる方法を考えたよ。 なにしろ朝が早い。選手の人数が多くて準備に時間がかかるから、出発は夜中の3時。町から砂漠までは、一番近くて1時間だ。到着後に出演者は着替える。その時間の気温は0度、ひどいときはマイナス1度。そんななかで準備しないといけない。午前10時すぎには気温がようやく上がり始めるけれど、最初の数時間、出演者たちは薄っぺらな衣装のままで震えていた。 夕方5時近くまで撮影する日があった。雨のシーンを撮り始めたら、すでに気温が低い時間になっていて、たぶん7度ぐらいだったと思う。かまわず進めたけれど、彼らを見ていて本当にかける言葉がなかったよ。寒さで全身が震えていた。こうした苦労が作品から観客にも伝わるはずだ。
Q、主要キャスト陣の体を張ったパフォーマンスは凄いですね。トラブルやアクシデントはありましたか? どの俳優もアクシデントを経験した。彼らの体の傷跡、この映画のためにできた勲章は一生消えない。エディ・ポンは尻全体を負傷。ショーン・ドウはひざ、チェ・シウォンの腕も傷だらけだ。長年アクション映画を撮ってきたが、今回ほど大勢の負傷者が出たことはない。撮影全体での負傷者数は80人。そのうち骨折が5~6人。本当に危険すぎて、こうしたリスクはどんなに安全策を講じても避けられない。実際の自転車レース自体が、常にそうした事故と隣り合わせだからね。
Q、『疾風スプリンター』は一言で言うとどんな映画ですか?見どころなども教えてください。 スポーツ映画と思ってもらうのはかまわないけれど、見てもらうと分かるが、単なるスポーツものでは決してない。実際この作品には、僕の以前の作品になかった要素がたくさんある。特に友情の要素が強い映画だと思っているよ。 夢を追うという面で一番重要なことは、求めた夢を手に入れることだけではなく、その過程で何を得るかだ。笑いあり涙あり、心が温かくなる、思いっきり楽しめる作品だ。そういう意味では、前作『激戦 ハート・オブ・ファイト』と共通要素があるといえるね。

監督・脚本:ダンテ・ラム

1965年5月11日、香港生まれ。香港人監督。
1980年代末、ゴードン・チャン監督の助監督を務め、97年の『G4特工 OPTION ZERO』で監督デビュー。翌年、ゴードン・チャン監督と共同監督した『BEAST COPS 野獣刑事』で、第18回香港電影金像奨最優秀監督賞を受賞した。2008年の監督作『ビースト・ストーカー/証人』は香港、中国、台湾で高い評価を受け、2010年の『密告・者』は第30回香港電影金像奨の最優秀作品賞、最優秀監督賞にノミネート。2013年の『激戦 ハート・オブ・ファイト』でも第33回香港電影金像奨最優秀監督賞にノミネートされている。2014年の『クリミナル・アフェア 魔警』は第64回ベルリン国際映画祭 パノラマ部門に正式出品された。